英単語と訳語のリストを覚えようとしても、それぞれにつながりのない単語は覚えにくいものです。
リストで覚えられるのは、2,000~3,000語が限界と言われていますので、それを超えた分は、「毎日少しずつ」「週に一度」など、定期的に復習し続ける必要があります。
「単語帳を何周しても忘れていく」というのは、むしろ自然なことです。
この復習の回数を減らす方法としては、文章の形で覚えるのが最も効果的です。復習の頻度を半年に一度程度に下げることができます。
文で覚える方法の一番のメリットは、単語を覚えるだけではできない、「英語力の獲得」が可能なことです。語彙、長文読解、リスニング、スピーキングの力が一度につくので、英語力全体で見れば、効率的な学習法といえます。
今回は、覚えるべき単語の含まれた文章を手に入れて、それを使って単語を覚える方法と、文で覚えるためのおすすめのレベル別単語帳をご紹介します。
文を使ったTOEIC単語の勉強法
文で覚えると言っても、必ずしも文章を一字一句丸暗記しなくてはいけないというわけではありません(もちろんそうできれば応用力もつくのでいいのですが、時間がかかります)。
子どものころ日本語の単語を覚えるとき、気に入ったお話を何度も読んでいるうちに、お話の中に出てきた単語を自然に覚えていったような感じです。お話全体を暗記する必要はありません。
ストーリーがあって印象に残れば、単語は格段に覚えやすくなり、また忘れにくくなります。
単語を覚える手順としては、大体このようになります。
(1)覚えるべき単語の含まれた英文(と読み上げ音声)を手に入れる(次の項でおすすめの単語帳をご紹介します)。
(2)まず、一回分の長文中にある未知語のつづりと意味と発音を単語欄で確認し、わからない構文があれば調べておく。長文の内容や語句・語法についての解説がある本の場合は、この時点で読んでおきます。
英文を前から読んで意味が取れない場合は、和訳を参考にして、意味の区切りごとにスラッシュ(/ 斜線)を入れておくと、あとの作業が楽になります。
(文法参考書はこちらでご紹介しています。)
⇒【初心者から990点まで】TOEIC対策 おすすめ文法参考書
(スラッシュの入れ方についてはこちらでご紹介しています。)
⇒ 英語速読 スラッシュリーディングの区切り方を例文と和訳で解説
(3)全体を2~3回黙読。和訳を見てもいいので、内容を頭に入れておきます。
(4)英文を見ながら、英文の読み上げ音声を聞きます。聞き取れなかったところは、こまめに聞き直し、全体を通して聞き取れるようにします。
(5)英文を見ながら、音声を聞いて1文ずつ復唱(リピーティング)します。「1文聞いて音声を一時停止し、その1文を復唱」を繰り返します。復唱はゆっくりでもいいですし、何度言い直してもいいですから、正確な発音を心がけます。徐々に、音声と同じくらいのスピードで言えるようにしていきます。
(6)英文を見ながら、全体をシャドーイングします。
(シャドーイングというのは、英語の音声を聞いて、聞くとほぼ同時に復唱する勉強方法です。影のようにすぐ後を、1~2語遅れで追いかけて復唱することから、この名があります。音声は大きめにして聞き、自分の声は小さめにかぶせるようにして発声すると聞き取りやすいです。)
シャドーイングは、音読よりも、英語音声の強弱・抑揚・リズムをまねしやすいので、リスニングやスピーキングの力もつきます。
音声についていけなくなったら音声を一時停止して追いつき、続けていきます。これを繰り返し、全体を通してシャドーイングできるようにします。
難しく感じるようなら、パラグラフ(段落)ごとにシャドーイングしてから、長文全体のシャドーイングに進むという形でもOKです。
そして、これはできたらで構いませんが、もし時間に余裕があれば、オーバーラッピング(英語の音声と同時に発音する)、暗唱までできると、格段にリスニングやスピーキングの力が伸びます。
(7)最後に、長文の下の単語リストのみを見て、反射的に意味を思い浮かべられるようにします。シャドーイングができるようになっていれば、すでに英単語の意味は理解できているので、ここでは日本語訳を言えるようにしてもいいですし、英英辞典で覚えている人は簡単な英語に直せるようにしてもいいです。
次に、単語の日本語訳を見て、つづりを思い浮かべられるようにします。紙に書いて覚えてもいいですし、空中に指で書いてもいいです。
コツとしては、アルファベットを言うのではなく、視覚的に単語の形を思い浮かべられるのを目指します。「語の真ん中が高かった」という印象から、真ん中の文字はrではなくて l だと分かる、という感じです。
今回ご紹介したのは、自習用の一例です。ご自分に合ったやり方に修正してお使いください。英文の音声が必要ない場合は、シャドーイングの代わりに音読でOKです。
おすすめのレベル別単語帳
TOEICの目標点数ごとに分けてご紹介します。
初心者~目標点数600点
『TOEIC(R)L&R TEST英単語スピードマスター』
TOEICによく出る3000語を収録した単語集。例文の読み上げ音声CDつきです。無料ダウンロードもできます。
初心者は、最初の600語の基本語からチェックを。
そのあと、生活やビジネスに関する頻出50テーマに沿った、一文の例文やパッセージで単語・熟語を覚えていきます。
目標点数 600~800点
『速読速聴・英単語 Core1900 ver.5』
「環境」「教育」「科学・テクノロジー」などの、TOEICでよく出題されるテーマの英語長文に、ターゲット単語が散りばめられているタイプの単語帳です。
64本の時事英文に、背景知識の解説が充実しているので、これもTOEIC受験に役立ちます。付属のCDは、スロースピード、ナチュラルスピードバージョンの2枚があるので、段階的にネイティブのスピードに慣れていけます。
また、こういう形式では、同じ分野の、よく一緒に使われる単語を一度に覚えられるのが利点です。
新しく覚える単語同士を結びつけたり、既に知っている単語に結びつけたりして、頭の中に言葉のネットワークを作るのが、最も長く記憶に残る覚え方になります。
出版社はZ会。英文ライターに英語ネイティブを起用している点も、信頼のおける一冊です。単語の意味は赤字で印刷され、赤シートで隠せるようになっています。
スラッシュリーディングの練習をしている方は、改訂前の ver.4 のほうがおすすめです。スラッシュ訳がつき、音声も ver.5の「スロースピードと、ナチュラルスピード」ではなく、「スラッシュごとに間隔をあけたものと、ナチュラルスピード」になっています。
英文を返り読みしないで、前から読む練習にもなります。
目標点数 730~860点
『ALL IN ONE TOEIC テスト 音速チャージ!』
例文が、16人の主要登場人物による物語になっているので、記憶によく残ります。
例文の音声は、スマホの無料アプリか、YouTube動画で聞くことができます。
この本の特徴は、和訳が二段階になっていて、英文の意味の区切りごとに前から訳し下ろした「読み下し和訳」が載っていることです。
下記のように、「英文、読み下し和訳、和訳」という構成になっています。
“So, shall we get started? At the top of the agenda is finalizing the outsitanding merger issue.”
「それでは・しましょうか?・私達は・始めることを。一番上に・議題の・ある・終わらせることが・未解決の・合弁の件を」
「それでは、始めましょうか? 最初の議題は、未解決のままである合弁の件を片付けることです」
上記の「文を使ったTOEIC単語の勉強法」の項でご紹介したスラッシュがすでに入り、スラッシュごとの訳もついている状態です。
このように完全な和訳をしないまま理解する練習をしていくと、ナチュラルスピードの英語が聞き取れるようになるので、リスニング問題が楽になります。
また、文法をまとめたページが付属し、251例文の全てに英文の文法構造を説明した無料動画もあります。
目標点数600~ 990点(満点)
『TOEIC L&R TEST 出る単特急 金のセンテンス』
『TOEIC L&R TEST 出る単特急 金のフレーズ』の著者による、比較的短い文章360文で1,500語を覚えるというコンセプトの単語帳です。
“The new packaging helped revitalize stagnant sales in Europe,” remarked the marketing executive.
「新しいパッケージが、停滞していたヨーロッパでの売り上げを復活させるのに役立った」とそのマーケティング役員はコメントした。
という一文で、
packaging(パッケージ) revitalize(復活させる) stagnant(停滞した) remark(コメントする) executive(重役)
の5語を覚えるといった形式です。文章が短い分、効率的。
文は易しいものから順に並んでいるので、目標点数に応じて選んで学習できます。
文ごとに解説がつき、英文の音声をHPから無料でダウンロードできます。
また、無料のスマホアプリで音声を聞くこともできます(英文のみ/和訳 ⇒ 英文/和訳 ⇒ 英文 ⇒ 単語 ⇒ 英文 の3種類)。
音読により、スピーキング能力やリスニング能力を鍛えることもできます。