名言 ハングリーであれ。愚か者であれ。ジョブズの意味した精神とは?

Steve-Jobs-2 今日の名言

segagman, Steve Jobs 1955-2011 (6216457030), CC BY 2.0 / Cropped from original>

ハングリーであれ。愚か者であれ。(Stay Hungry. Stay Foolish.)

これは、アップルとピクサー・アニメーション・スタジオの創業者、スティーブ・ジョブズ氏が2005年6月12日に、スタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチの最後のほうに出てくる言葉です。

スポンサーリンク

スピーチの日本語訳と英語原文

少し長いですが、スピーチの最終部分の日本語訳をご紹介します。

「私が若い頃、『全地球カタログ』という素敵な本があり、私の世代においては聖書のような本でした。ここからそう遠くないメンロパークに住むスチュワート・ブランドという男性の作品で、詩的な表現による躍動感がありました。パソコンやデスクトップ出版が普及する前の、1960年代の終わりごろの作品で、すべてタイプライターとハサミ、ポラロイドカメラで作られていました。グーグルの登場より35年も前、いわばグーグルのペーパーバック版です。理想主義的で、素晴らしいツールや考えが詰まっていました。

スチュワートと彼の仲間は『全地球カタログ』を何度か発行し、一通りやり終えると、最終号を出しました。それが1970年代半ば、私が皆さんと同じ年の頃です。その最終号の裏表紙は早朝の田舎道の写真でした。あなたが冒険好きなら、ヒッチハイクをする時に目にするような風景です。その写真の下に、次のような言葉が添えられていました。「ハングリーであれ。愚かであれ」。彼らの別れのあいさつでした。ハングリーであれ。愚か者であれ。私自身、いつもそうありたいと思っています。そして今、卒業して新たな人生を踏み出すあなた方にもそうあってほしい。

ハングリーであれ。愚か者であれ。

ありがとうございました。」

↓『全地球カタログ』最終号の裏表紙

Whole-Earth-Catalogue-last-2
Photo by Whole Earth Catalogue

続いて、英語原文(スタンフォード大学のリリースより)を引用します。

When I was young, there was an amazing publication called The Whole Earth Catalog, which was one of the bibles of my generation. It was created by a fellow named Stewart Brand not far from here in Menlo Park, and he brought it to life with his poetic touch. This was in the late 1960’s, before personal computers and desktop publishing, so it was all made with typewriters, scissors, and polaroid cameras. It was sort of like Google in paperback form, 35 years before Google came along: it was idealistic, and overflowing with neat tools and great notions.

Stewart and his team put out several issues of The Whole Earth Catalog, and then when it had run its course, they put out a final issue. It was the mid-1970s, and I was your age. On the back cover of their final issue was a photograph of an early morning country road, the kind you might find yourself hitchhiking on if you were so adventurous. Beneath it were the words: “Stay Hungry. Stay Foolish.” It was their farewell message as they signed off. Stay Hungry. Stay Foolish. And I have always wished that for myself. And now, as you graduate to begin anew, I wish that for you.

Stay Hungry. Stay Foolish.

Thank you all very much.

引用元:Text of Steve Jobs’ Commencement address (2005)

スポンサーリンク

『全地球カタログ』とは

『全地球カタログ』は1960〜70年代のヒッピーカルチャーに多大なる影響を及ぼしたカタログ本で、現在、その全ページがWEBサイト上に公開されています。地球上のすべての商品のカタログと銘打って1968年から1972年まで刊行され、今や伝説となっている本です。

↓『全地球カタログ』1968年秋号の表紙

Whole-Earth-Catalogue-2
Photo by Whole Earth Catalogue

内容は、全体システムの理解、シェルターと土地の利用、産業と民芸、コミュニケーション、コミュニティ、遊牧民族、学習などのカテゴリーに分かれ、次のような指針によって選ばれたものが掲載されていました。

  1. 役に立つ道具である
  2. 自立教育に関係がある
  3. ハイクオリティー、もしくはローコストである

当時は画期的だった通信販売も行われていたといいます。

ヒッピーカルチャーというのは、1960年代後半にアメリカのベトナム反戦運動や公民権運動を中心とする反体制運動から生まれた、「ラブ&ピース」を提唱し自然回帰を目指すカウンターカルチャーです。

スティーブ・ジョブズ自身、学生時代にヒッピーカルチャーに心酔していたのもあり、既成社会の伝統に縛られず、新しいものを生み出すことに熱中し、持ち前の創造力と独創性が花開いていったようです。

↓ヒッピースタイルのミュージシャン

Hippie-2
alexkon, RussianRainbowGathering 4Aug2005, CC BY-SA 2.0

「ハングリーであれ。愚か者であれ。」とは

原文では Stay hungry. Stay foolish. です。

hungry = Characterized by or expressing hunger or craving (The American Heritage Dictionary of the English Language, Fifth Edition), 渇望して。

foolish = Lacking or exhibiting a lack of good sense or judgment (The American Heritage Dictionary of the English Language, Fifth Edition), 判断力に欠けて愚かな、分別のない、非常識な、という意味で、stupid の not intelligent(知性がなく愚かな)とはニュアンスが違います。

スピーチの、この前の部分で、ジョブズ氏はこうも言っています。
「他人の意見が雑音のようにあなたの内なる声をかき消したりすることのないようにして下さい。そして最も重要なことですが、自分の心と直感に従う勇気を持って下さい。それはどういうわけかあなたが本当になりたいものをすでによく知っているのだから。それ以外のことは全部、二の次で構わないのです。」

“Don’t let the noise of others’ opinions drown out your own inner voice. And most important, have the courage to follow your heart and intuition. They somehow already know what you truly want to become. Everything else is secondary.”

ここまでの話を総合すると、
Stay Hungry. では、「現状に満足することなく貪欲に学び続け、よりよい人生にしていくこと」を学生たちに勧め、
Stay Foolish. では、「既成の常識にとらわれすぎず、たとえ周りから奇異に思われても、自分の心の声に従って進んでいくこと」を、望んだのではないでしょうか。

スタンフォード大学の学生は、卒業後、起業をする人の多いことで知られます。その卒業祝賀スピーチ全体を通して、ジョブズ氏は「失敗にもめげず、自分の心の声に従い、好きな道を進んでいってほしい」という渾身のメッセージを贈りました。それをワンフレーズでまとめたのが、「ハングリーであれ。愚か者であれ。」という言葉です。

このスピーチから18年が経ち、世界は仕事のデジタル化、エネルギー問題、食糧問題など、先の見えない時代に突入しました。今こそ誰もが、ハングリー精神と情熱を胸に進んでいくことによって、幸せな人生を送れる時代になっているのかもしれません。

 
 
<おすすめ書籍>
『スティーブ・ジョブズ I』

取材嫌いで有名なスティーブ・ジョブズが唯一全面協力したからこそ書けた、唯一無二の伝記。家族、経営、人生の目的……。
ベテラン翻訳者の井口耕二氏による、淡々とした中に登場人物たちの思いがにじみ出る名訳です。

 

タイトルとURLをコピーしました