英文の速読法を、1分間に200語読むレベル(TOEIC満点)、飛ばし読みで1分間に500語以上読むレベル(英語ネイティブの成人の平均値=1分間に300語を超えるレベル)の2レベルについて、それぞれ詳しく解説します。スラッシュリーディング、スキミング、パワー・スキミング、アイ・ハンド(シングル・ラインとダブル・ライン)などを採り上げます。
「レベル1 英語の文章全体に目を通し、1分間に200語くらいのスピードで読めるようにする」で4技法、
「レベル2 飛ばし読み(拾い読み)をして、1分間に500語以上のスピードで読めるようにする」で4技法、速読の方法が身につきます。
レベル1 英語の文章全体に目を通し、1分間に200語くらいのスピードで読めるようにする
日本人の英文を読むスピードの平均は1分間に100語くらいですから、倍のスピードで読めるようにします。TOEICの問題を解き切るには1分間に150語以上といわれていますが、これなら余裕ができます。
必要になるのは次の4技法です。
- 意味のかたまりごとに理解できるようにする(スラッシュリーディングの技法を身につける)
- 返り読みをしないで、英語の語順のまま読めるようにする(アイ・ハンド(シングル・ライン)の技法を身につける)
- 語彙力(単語力)をつける
- 英文の構造を捉える力(文法・語法の知識)をつける
それぞれ解説していきます。
1.意味のかたまりごとに理解できるようにする(スラッシュリーディングの技法を身につける)
意味の区切りごとにスラッシュ(/)を入れながら、英語を前から語順のまま読む方法を、スラッシュリーディングといいます。最初は3語くらいずつで、次のように区切っていきます。
People grow / through experience / if they meet life / honestly and courageously.
意味の解釈も [People grow 人は成長する] [through experience 経験の中から] [if they meet life 人生に接していれば] [honestly and courageously. 誠実さと勇気を持って。] というように語順通りに行います。
「返り読み(戻り読み)」の癖がついている人は、この文を「人生に誠実さと勇気を持って接していれば、人は経験の中から成長していく。」と、日本語の語順に直してから理解しようとします。日本語としては正しいのですが、このやり方では文の最後まで読まないと解釈に取り掛かれず、何度も文を往復して読むことになります。そうすると時間もかかり、文が長くなるにつれて理解力も落ちてきます。
スラッシュリーディングでは、意味の解釈をスラッシュを入れると同時に行い、最初から最後まで戻らずに読みます。
意味の区切りを見分けるための最も有効な方法は、その文を声に出して読んでみることです。そのとき一気に読むまとまり、自然に息継ぎが入るところや、イントネーション(抑揚)が下がるところが意味の区切りです。
実際には黙読になることが多いと思いますが、そのときは頭の中で声を出しながら読んでください。
スラッシュリーディングについて詳しくは、「英語速読 スラッシュリーディングの区切り方を例文と和訳で解説」の記事をご参照ください。
2.返り読みをしないで、英語の語順のまま読めるようにする(アイ・ハンド(シングル・ライン)の技法を身につける)
学校の英語の授業で良い和訳を作るために返り読みをしてきているので、これをやめるのは難しいと思います。そこで、手も使って矯正する方法をご紹介します。
アイ・ハンド(eye-hand)というのは、英語の文章を指などでなぞりながら読む方法です。読み返しがなくなる上に、重要な箇所に注目しやすくなり、手の動きにつられて読む速度も速まります。
まず英文の1行目の最初の単語の下に指を置き、右へなぞります。目は指の少しだけ先を読みます。右の端まできたら指を少し浮かせ、次の行へ移ります。返り読みせず一定の速度で読むようにしましょう。
この方法は、指を動かす速度をだんだん速くすることで、読むスピードを上げていくことができます。
3.語彙力(単語力)をつける
これは英文を読んだ量に比例して伸びていくものですが、集中的に覚えたい場合は、やはり単語帳が便利です。ただ、単語と意味を並べただけのものは記憶の定着率が低く、短い文と一緒に覚えるタイプのほうが長く記憶に残ります。音読できると一番いいので、音声つきのものがおすすめです。
短いフレーズで覚えたいなら、『システム英単語』(2,180語収録)。
たとえば「厳しい」なら、severe winter weather「厳しい冬の天候」とstrict rules「厳しい規則」のように、語の意味と使い方が分かるのですんなり覚えられます。無料音声つき。レベルはTOEIC800点くらいまで。
『システム英単語<5訂版>』
完全なセンテンスのほうが覚えやすいなら、『究極の英単語』シリーズがおすすめです。1文で2語~4語の単語が覚えられるようになっています。
Recollections of her debut as a jazz singer temporarily lightened her heart.(ジャズシンガーとしてデビューを飾った時の思い出が一時的に彼女の心を明るくした。)という1文で、Recollection(思い出)、debut(デビュー)、temporarily(一時的に)、lighten(明るくする)の4語を覚える、という形式です。
英文を日本人が書いている本には、少し不自然な文の含まれているものがありますが、この本は英語ネイティブが英文を書いているので安心です。
『究極の英単語』には3,000語ずつ、Vol.1からVol.4の4冊があり、重複することなく12,000語まで語彙力を伸ばせます。8,000語でTOEIC満点、12,000語で英検1級レベル。別売りで音声をダウンロードできます。
『究極の英単語 Standard Vocabulary List [上級の3000語] Vol.3』
4.英文の構造を捉える力(文法・語法の知識)をつける
単語は分かるけれど文章の意味が分からない場合は、文法・語法の知識が必要です。一度しっかり構文解析力をつけておくのが近道です。
5文型や時制や態、関係詞などの文法については、高校卒業程度の知識があれば、英語の文章はだいたい読めます。
句動詞(イディオム)や個々の語法についても一つずつ覚えていくしかありませんが、これを瞬時にとらえられるようになると、速読のスピードは一気に上がります。
日本語の文章を速く読めるのは、次にくる内容を大体予測して読んでいるからですね。たとえば、
「○○なのは」のあとには「△△だから」がくるはず・・・。
「それほど」のあとには「~ない」がくるはず・・・。
のように、探しながら読んでいます。
英語でも、complain to A of B(AにBについて不平を言う)という語法を知っていて、complain to と読んだ時点で、of ~ がくるのが分かっていれば、その分速く読めます。
こういうことは覚えてから繰り返し出合うことによる「慣れ」でスピードが出ます。基本的なものから覚えていき、速読の練習の中で英語の文章をたくさん読めば、自然に慣れていきます。
文法・語法についてまとめた本の中では、『スクランブル英文法・語法 4th Edition』が優秀です。
『スクランブル英文法・語法 4th Edition』
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係り受けの入り組んだ長いセンテンスが出てくるような、難しい英文を読まなければならない場合には、『ロイヤル英文法』や『English Grammar in Use』などの文法書で調べながら都度、覚えていきます。詳しくて分かりやすいものは、この2冊。和書と洋書、どちらかで。
『ロイヤル英文法―徹底例解』
『学習手帳付 日本限定版 English Grammar in Use 5th edition Book with answers and interactive ebook Japan Special edition』
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レベル2 飛ばし読み(拾い読み)をして、1分間に500語以上のスピードで読めるようにする
飛ばし読みは、ところどころを拾い読みして、知りたいことだけを把握するための速読法です。どれくらいの精度で読むかによって、以下の技法を使い分けます。
- スキミングの技法を身につける
- パワー・スキミングの技法を身につける
- 理解領域(perception span)を広げる
- アイ・ハンド(ダブル・ライン)の技法を身につける
1.スキミングの技法を身につける
知りたいことはただ一つ。でも、この膨大な資料を隅から隅まで読む時間はない! というときに役立つ飛ばし読みの技法をスキミング(skimming)といいます。
たとえば大学入試やTOEICなどの長文問題で時間がないときなどは、次のようにします。
1.まず設問を読んで、探すべき単語を頭に入れておきます。
2.次に長文を、左上から右下までの対角線上にある単語だけ読んでいきます。次に右上から左下まで。
3.知りたいことに関する単語を見つけたら、そこだけ文を読みます。
2.パワー・スキミングの技法を身につける
スキミングよりももう少し詳しい情報を知りたいときには、次の方法で読みます。
- スキミング
- 最速スピードでざっと通読する
- 重要な個所に下線を引く
- 下線を引いた個所のみ、もう一度読む
3.理解領域(perception span)を広げる
英文を読むスピードを遅くしている原因の一つは、単語を一つ一つ追って読んでいること。分からない単語があると、そこで止まったり、読み直したりしてしまいがちです。こういう読み方をすると全体の意味がとらえにくくなってしまうので、かえって理解度が低くなります。
そこで、単語にこだわらず、文章を単語のかたまりごとに理解するトレーニングをしましょう。
まず、あなたの理解領域(perception span)を調べてみます。次の3種類の文章のうち、どれが読みやすいですか?
Passage 1
To begin their
◆
explanation of the
◆
nuts and bolts
◆
of audio production,
◆
these experts start
◆
with what is
◆
most important: the
◆
recording process itself.
Passage 2
During recording sessions, the
◆
producer directs the narrator
◆
on his or her interpretation
◆
of the text. In essence,
◆
the producer establishes the
◆
tone of the production.
◆
The engineer’s task
◆
is to edit the tape
◆
as it is being recorded,
◆
much as an editor revises
◆
the text of a printed book.
Passage 3
The first challenge is selectiong the best possible
◆
narrator. There are various possibilities. Many
◆
producers prefer to work with professionals. They
◆
can consider tapes that pour in every day from
◆
unsolicited narrators, a source that seldom pays off.
◆
Or they can hire famous actors and actresses.
◆
These narrators can be difficult to work with because
◆
they are often not accustomed to sustained reading.
当然1より3のほうが読むスピードも速いですね。そこで領域を広げるトレーニングをしましょう。
まず、A7(10.5cm × 7.4cm)くらいのカードを用意して、7.5cm × 1.3cmくらいの長方形をくりぬきます。これを使って英文を読む練習をします。窓から見える単語を一目で読んでください。そして、この窓を少しずつ大きくしていきます。
4.アイ・ハンド(ダブル・ライン)の技法を身につける
上記でアイ・ハンドのシングル・ラインについて触れました。さらに進んで、ダブル・ラインです。雑誌やニュース記事などの、あまり技術的でない文章を読むときに利用します。
シングル・ラインを1行飛ばしで行ってください。慣れたら、2行飛ばしに挑戦してみてもいいですね。
ここまでくると、1分間に500語以上のスピードは出ると思います。英語で書かれた大量の情報に触れられるようになると、自分の世界も広がります。ぜひ、速読法を身につけてください。