ビートルズ レットイットビーの2つの意味 悲しみから希望へ

meaning-of-let-it-be今日の名言

Created by modifying “Annunciation” (© Livioandronico2013 (Licensed under CC BY-SA 4.0))

“Let it be” は「なんとかなるわよ」という慰めの言葉としてよく使われる表現ですが、ザ・ビートルズの名曲「レット・イット・ビー」の中では何度も使われ、途中から別の意味に変わっています。

曲の作られた当時の世相や作詞者ポール・マッカートニーについて調べてみたところ、この曲の意味がやっと理解できたようなので、今回、まとめてご紹介したいと思います。

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第1連で使われているレット・イット・ビーの意味

「レット・イット・ビー」の歌詞は、悩みを抱えた主人公の前に、Mother Mary が天使のように現れ、囁くところから始まります。

When I find myself in times of trouble
Mother Mary comes to me
Speaking words of wisdom
Let it be

僕が悩みの中にいるとき
母なるマリアが現れて
知恵の言葉を授けてくださる
「ただ受け入れなさい」と

4行目のletは、<人・ものなどに>「…することを許す」。

“let … be” で、「…をかまわないでおく、ほうっておく、自分からは何もしないで、なるがままにさせておく」という意味です。
妨げようとせず、事が自然に流れるままにさせる態度を言います。

ここでは “let it be” の形で使われ、「なんとかなる、リラックスしなさい、心配しないで」という慰めの言葉になっています。悲しいことを考えすぎないように、また、悪いことが起こってそれを変えられないときに受け入れられるように、かける言葉です。

Mother Mary が悩める主人公のもとに来て、「なるようになるから、もう悩むのはおよしなさい」とささやく場面です。ただ悲しんだり耐えるのではなく、自分の力ではどうすることもできない事を悩み続けるのをやめて、運を天に任せるように促しています。
 

Mother Mary とは誰か?

Mother Mary はキリスト教的な視点では「聖母マリア」と読めます。

聖書の「ルカによる福音書」 (1:26-38) に、受胎告知について書かれています。受胎告知とは、ナザレの乙女マリアのもとに大天使ガブリエルが現れ、マリアが聖霊によって神の子イエスを宿したと告げたことを指します(上の絵はレオナルド・ダ・ヴィンチの「受胎告知」)。

この告知に対するマリアの返答が、Let it be なのです。

戒律の厳しい当時、父親の分からない子を宿すなど、石を投げつけられるような辛い立場になることは分かりきっています。でもマリアは勇気を持って、それを受け入れました。

And Mary said, “Behold, I am the servant of the Lord; let it be to me according to your word.”
―― English Standard Version 『標準英語訳聖書』

マリアは言った。「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように。」
―― 『新共同訳』 ルカによる福音書 1-38

作詞者のポール・マッカートニーは、「『レット・イット・ビー』は Virgin Mary (聖母マリア)について歌っているのか」と聞かれるたびに、「そう解釈してくれても構わない」、「ファンの解釈に委ねる」と答えています。

そして2018年にテレビ番組でジェームズ・コーデンのインタビューに答えたところによると、ポールが14歳のときに病気で他界した母メアリーが、この曲を書くきっかけになったということです。

ビートルズ末期、経営陣の苛烈な争いが原因で彼らのビジネスは大混乱に陥っており、長年親しい友人だった4人の仲は険悪になっていました。そして1968年に行われたアルバム『ザ・ビートルズ』のためのセッションの最中、ポールはビートルズが分裂の危機にあることを嘆いていました。

そんなある夜、亡き母メアリーが夢枕に立って、”It’s gonna be OK. Just let it be…” 「大丈夫。ただ受け入れればいいのよ……」と安心させてくれたといいます。

そのことについてポールは、「母に再会できたのは本当によかった。夢で祝福された気分だった。だから僕は母の言葉を基にして「レット・イット・ビー」を書いたんだ」と語っています。

ポールのお母さんへの愛は、別れの悲しみをつづった「イエスタデイ」の歌詞にも表れています。苦難の時、そのお母さんが助けてくれたように感じられたことでしょう。

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第3連で使われているレット・イット・ビーの意味

さて、歌詞の第3連と、続く第4連では、主人公は自分の状況を思い悩むのをやめ、世界に目を向けています。

そして世界中で争っている人々、憎しみ合い戦争をしている地域で傷ついた人々、愛するものと離れ離れになっている人々に呼びかけています。

And when the broken hearted people
Living in the world agree
There will be an answer
Let it be

世界中に住んでいる
心傷ついた人々が合意に達するよう努めるなら
答えは得られるだろう
実現しよう

 

For though they may be parted there is
still a chance that they will see
There will be an answer
Let it be

今は離れ離れになっていても
再び会えるチャンスはまだある
方法はあるだろう
実現しよう

こちらの let は、<人・ものなどに>「~させる」の意味で使われています。先程のように「妨げないでそのままにしておく」だけではなく、「積極的に、何かが起きるようにする」ことです。

1968年当時、世界中で戦争が起こっていました。北アイルランド紛争、ベトナム戦争、インドとパキスタン、イスラエルとパレスチナの紛争。互いに争い、傷ついている人々がいました。

歌詞のこの部分では、「平和な世界を取り戻すために、本当にするべきことは何なのか。真実を追求し、お互いに折り合いをつけるなら、答えは得られるだろう。離れ離れになった愛する人とも会えるだろう。行動を起こそう」と呼びかけています。

1971年にはジョン・レノンが反戦歌「イマジン」を発表しています。こちらも「レット・イット・ビー」と同様、平和な世界への希望を歌っています。

著作権の関係もあり、「レット・イット・ビー」の全文はご紹介できませんが、「beatles let it be lyrics」などの検索で原詞が見られますから、ぜひご覧になってみてください。

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